Reading Time: 1 minutes
ITIL®4の重要な概念「価値の共創」とは
サービスマネジメントにおける「カスタマ・ジャーニー」とは
サービスの価値とは
今回は「価値の共創」について、少し掘り下げてみたいと思います。
1回目でもお話しましたが、ITIL®4では「サービス」を以下のように定義しています。
“顧客が特定のコストおよびリスクを管理することなく、望んでいる成果を得られるようにすることで、価値の共創を可能にする手段”
ここで言う「価値」とはどのようなものでしょうか。例えば、タクシーというサービスを考えてみましょう。タクシーを利用すれば料金が発生します。電車やバスなどの公共交通機関に比較すると、一般的にタクシーの料金は高額なものになります。にもかかわらず、消費者がタクシーを利用するのは、そこには差額分を支払っても良いと思える「何か」があるはずです。それがタクシーというサービスの「価値」です。例えば、公共交通機関を使うよりも所要時間を短縮できる、ドアツードアで歩かずに済むなどがサービスの「価値」です。また、消費者が感じる「価値」には、移動中にリラックスできるというような主観的なものも含まれます。
価値の共創
次に、タクシー配車アプリというサービスを考えてみましょう。タクシー配車アプリを提供するサービス・プロバイダは、全国各地のタクシー事業者と契約してサービスを展開しています。タクシー事業者が期待するのは、タクシー配車アプリによりタクシーの稼働率を向上させて売上を増やすことです。
また、タクシー配車アプリを日常的に利用するのは一般消費者です。一般消費者の期待は、より簡単に、タイムリーかつピンポイントにタクシーを呼ぶことです。例えば、外出先でタクシーを呼びたいというような場面で、タクシー配車アプリは非常に重宝します。
この場合、サービス・プロバイダから見ると各タクシー事業者は顧客ということになります。そして、タクシーというサービスの価値は、タクシー配車アプリによって強化されています。サービス・プロバイダと顧客の協力により新たな価値を創出する、これが「価値の共創」の考え方です。(図1)
カスタマ・ジャーニー
サービス・プロバイダとサービス消費者との間では、様々なやり取りを通して関係が構築されていきます。一連のやり取りの中で、サービス消費者の体験を時系列にまとめたものが「カスタマ・ジャーニー」です。
「カスタマ・ジャーニー」は、元はマーケティング分野で生まれた概念であり、商品やサービスの販売促進において、その商品・サービスを購入または利用する人物像(ペルソナ)を設定し、その行動、思考、感情を分析し、認知から検討、購入・利用へ至るシナリオを時系列で捉える考え方です。(図2)
この例では、ある消費者がペット商品販売のWebサイトを利用して、食物アレルギーに配慮したペットフードを購入するというシナリオを想定し、一連の顧客体験を表現しています。
カスタマ・ジャーニーの設計
ITIL®4では、サービスマネジメントに関連するカスタマ・ジャーニーの流れを、7つのステップで整理しています。これら7つのステップを通して、サービス・プロバイダとサービス消費者は、協力的な関係を構築していきます。(図3)
カスタマ・ジャーニーには、サービス・プロバイダとサービス消費者との様々な接点(タッチポイント)や、「価値の共創」に向けた互恵的な活動(インタラクション)が含まれます。
それぞれのサービス消費者が期待する成果や価値は一様ではないため、求められる顧客体験も異なります。サービス・プロバイダは、代表的なシナリオや消費者像(ペルソナ)を想定して、カスタマ・ジャーニーを設計していきます。
より良い顧客体験によって「価値の共創」を実現することは、サービス化の時代におけるサービス・プロバイダにとって、欠かせない能力と言えるでしょう。
まとめ
今回は、価値の共創を実現するための「カスタマ・ジャーニー」の考え方を説明しました。次回は、VUCAに対応した「ハイベロシティIT」についてご紹介しようと思います。
本連載記事について
本連載記事では、ITIL®4やITSMの企業向け研修を担当する講師が、研修受講者から日頃よく受ける質問に答えるような形式で、ITIL®4の重要ポイントをわかりやすく解説しています。ITIL®4への理解を深め実務に活かすための一助として、ぜひお役立ていただけますと幸いです。
連載記事一覧はこちらのページにてご確認いただけます。
※ITIL(IT Infrastructure Library®)はAXELOS Limitedの登録商標です。
フィードバックフォーム
当サイトで検証してほしいこと、記事にしてほしい題材などありましたら、以下のフィードバックフォームよりお気軽にお知らせください。