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ツールを導入する目的や求められる効果として「業務の効率化」があげられるかと思います。しかし、実際にどれだけの効果があげられそうなのかといったことは、導入して使ってみてからでなければ見えてこないと思います。そのため「厳密に算出することは難しい」と思う気持ちは、ほとんどの当事者が共感できると思います。また、一方では業務効率化が叫ばれる昨今において、「本当にパッケージを利用すると業務工数が減るのだろうか」と考えながら、パッケージの利用を吟味している人もいるかもしれません。
ここでは、 ソフトウェアによる業務の効率化のポイントを解説してみたいと思います。
インシデント管理ツールの導入が業務工数の削減に繋がる
結論として、インシデント管理ツールを導入することで業務効率化・業務工数削減に繋げることはできます。決済や承認のキーワードにもなる「業務効率化」がツールを導入することによってどのような形で現れるようになるのか、解説してみようと思います。
インシデント管理ツールを活用できれば業務工数は削減可能
そもそも、一般的に販売されているインシデント管理ツールは業務改善や効率的な運用を目的に開発されたものなので、数あるツールからしっかり選定作業を行って導入すれば、ほとんどの業務工数が削減できると考えて良いでしょう。
ただし、各種あるインシデント管理ツールにはそれぞれ想定されている使い方や、それを補完するための機能が備わっているため、想定されている使い方の範囲で利用することが前提となります。あやまった使い方をすれば利用の効果も得にくくなり、むしろ業務工数が増えてしまう可能性があります。そのためツールを導入する前に業務とツールの相性を検証することが重要になります。
ツールに適した業務フロー作りが重要
基本的なツールにはデータの保存やレコードに対する変更記録、各種作業が自動化される機能が備わっています。これとは別に業務の進め方等がツールによってそれぞれ違うので、効率化を実現させるためには現在の業務とツールの相性を検証することが必要になります。
ツールの導入を検討する際には、現在の業務フローがある程度変更されることも考慮して、ツール上での業務フローや機能にあわせて、現在の業務フローを変えることも必要になります。
スクラッチ開発では、社内の業務フローに合わせて機能を開発・カスタマイズすることが可能ですが、パッケージソフトではそれができません。「パッケージソフトを選ぶか、スクラッチ開発を選ぶか」は、「ツールに合わせて業務フローを見直すか、業務フローにあったツールを開発するか」といった選択をすることにもなります。 インシデント管理ツールの導入を検討されているのであれば、これまでの業務フローを見直して改善を計るには良いタイミングにもなります。業務に合った適切なソフトウェアを選ぶ過程で、ソフトウェアを利用した業務フローを想定しながらFit&Gapを確認するとよいでしょう。よく探してみると、いまの業務にフィットしたツールが見つかるかもしれません。
パッケージの導入で業務工数が削減する理由
大きく分けて3つの理由からパッケージの導入で業務工数を削減できます。
- 業務に最適化されたソフトウェア
- 一つのアプリケーションによる管理
- 維持・保守に必要な作業が不要
業務に最適化されたソフトウェア
当たり前のことですが、パッケージソフトは特定の業務に最適化されたソフトウェアとして開発されています。そのため、業務を行う上での使いやすさや自動化の機能など、必要な性能は十分に備わっています。
例えばインシデント管理であれば、「受付→登録→対応→対応完了」との業務フローが一般的です。このような業務フローはパッケージソフトでも当たり前のように実現できます。これまで、Excelで管理している方であれば、問い合わせのレコードに対して何かしらの活動を実施して、その結果をフラグ等で判別できるようにといった一連の作業だけでも、複数回の手作業が発生しているはずです。
スクラッチ開発のツールを利用している状況で、改修やリプレイスを検討されているのであれば、ツールを探し始めFit&Gapとあわせて、ソフトウェアに合わせた業務フローを考えるのに必要な時間と、新しい開発要件にかかる時間を想像してみてもよいかもしれません。
ひとつのシステムで完結するから
上記と似たような話ではありますが、パッケージソフトウェアを導入することで、一つの業務に対して複数ツールを利用することがなくなるため、「データの連携を待つ」「複数のシステムにログインする」など、業務のボトルネックになる部分が存在しません。
複数のシステムを利用した環境にどの様なボトルネックがあるのか例をあげてみましょう。例えば、「問い合わせするシステムと受付するシステムが異なる」というものがあります。この場合は複数のシステムにログインをして、問い合わせ内容を転記して受付するなどの手間が発生していました。
「慣れれば複数のシステムでも問題ない」と感じるかもしれませんが、対応件数が多くなると少しの手間が積み重なり大きな工数の差を生み出します。
維持・保守に必要な工数を削減できるから
スクラッチソフトと比較すると、維持・保守のために専用の要員を確保してもらう必要がありません。パッケージソフトでは開発ベンダーに専門の技術者がいるので、そこがサポートしてくれます。社内では運用を中心としたチーム構成で問題ありません。
また、ソフトウェアに定期的に新機能を提供してくれるなどの特徴があります。スクラッチソフトウェアでは全て自分たちで開発する必要がありますが、パッケージソフトウェアではそのような工程が発生しません。
パッケージ導入による業務コストの削減試算
この事例では業務で以下のような問題が発生していたため、これを解決するためにインシデント管理ツールの導入が決定されました。
- 問い合わせ・マスタ登録依頼などがメールで来るため、対応に抜け漏れが出てしまう
- メールの情報をシステムに転記する必要があり手間がかかる
- 情報の共有が上手くできず、誰がどの問い合わせに対応しているか分からない
状況として、問い合わせ件数が多く、メールで問い合わせする運用であったため、受付漏れ・対応漏れがありました。それが結果としてクレームに繋がり、急いで対応するための残業が発生し、コストが無駄に発生するとの悪循環を生み出していました。
1カ月の対応件数は200件程度であり、この件数に対応する工数がインシデント管理ツールの導入により1件あたり以下のとおり変化しました。
作業内容 | 導入前 | 導入後 |
---|---|---|
インシデント受付 | 15分 ※抜け漏れあり |
5分 ※担当者の偏りなし |
完了連絡 | 10分 | 4分 |
インシデント管理ツールを導入したことで問い合わせ管理が集約されました。専用のフォームから問い合わせをしてもらうと自動的にツールに登録され、そこで一元管理する運用としました。
一元管理できるようになりましたので、問い合わせレコードの記載漏れとそれによる受付漏れがなくなりました。レコードの記載にかかる作業と、対応完了後の連絡もツールから送付できるようになり、結果として1件あたりの対応工数が半分程度に削減されました。
1件あたり16分の削減ですので、月間で3,200分≒53時間の削減です。1人月を70万円と仮定すると、毎月20万円程度の人件費を削減できる計算となります。
事例2:従業員規模3,500人程度・情シス部門100人程度
続いての事例では業務で以下のような問題が発生していたため、これを解決するためにインシデント管理ツールの導入が決定されました。
- 現状はスクラッチのインシデント管理ツールを利用している
- 複数のシステムが存在し横断的に利用する必要があり手間がかかる
- 問い合わせ・作業依頼が多すぎて振り分けが間に合わない
- 業務要件として対応のログを残す必要がある
状況として、インシデント管理ツールを利用していましたが、スクラッチであったため機能面の不安がありました。また、問い合わせと障害を別のシステムで管理していたため、作業に手間がかかるなどの問題がありました。加えて問い合わせ件数が多く、担当者の振り分けができない・リソース不足が発生するなどの根本的な問題もありました。
1カ月の対応件数は2,000件程度であり、この件数に対応する工数がインシデント管理ツールの導入により1件あたり以下のとおり変化しました。
作業内容 | 導入前 | 導入後 |
---|---|---|
インシデント受付 | 11分 | 7分 |
担当者振り分け | 8分 ※振り分けミスあり |
5分 ※担当者の偏りなし |
ログの転記・記録 | 15分 | 0分(自動的に記録) |
インシデント完了連絡 | 8分 | 4分 |
こちらのお客様は業界の法規制に従い、問い合わせ対応を記録したうえで、監査資料に利用することもあり、問い合わせの記録・資料作成の工数がかさんでいました。
インシデント管理ツールでは、問い合わせの受付からレコード作成、レコードに対する対応内容の記録まで、全ての作業をツール上で対応することができるようになりました。監査に必要なログはツール上から監査に必要な情報をすべて記録するようにしたため、監査用資料の作業工数が削減されました。
このケースでは監査のための資料作成といった特殊な要件を満たすために、インシデント管理ツールが大きな役割を果たしました。
1件あたり26分の削減ですが要件対応が必要のない問い合わせも多数あります。平均すると1件あたり10分程度の削減で、月間で20,000分≒333時間の削減です。1人月を70万円と仮定すると、毎月150万円程度の人件費を削減できる計算となります。
まとめ
インシデント管理ツールを導入すれば、その他のソフトウェアを利用するよりも業務工数を削減できます。スクラッチソフトウェアで運用している場合もあると思いますが、適切なツールを選択して、ツールにあわせて業務フローを見直すことで、業務工数の削減が可能です。
どの程度の業務工数が削減できるのかは企業の規模や問い合わせの件数などによって異なります。今回ご紹介した例を参考に、どの程度の工数やコストが削減できるのか、試算や見直しをしてみてはいかがでしょうか。
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