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ヘルプデスク業務を担当されている方の中にはインシデント管理ツール導入の話題に対して「費用対効果を求めて欲しい」と指示を受けている方もいらっしゃるのではないでしょうか。「なんとなく運用は便利になりそう」と考えているものの、具体的な費用対効果はどの程度までイメージできているでしょうか。ここでは、インシデント管理ツールを導入するかどうかの鍵となる、費用対効果の考え方について解説していきます。

インシデント管理ツールの費用対効果について

インシデント管理ツールの導入で得られる、費用対効果について算出するポイントを解説します。

費用対効果とは

ここでは費用対効果の定義を「システム導入に掛かるトータル費用とその後に発生する運用費」に対して「どれだけ業務が効率化されたか」と定義します。導入のトータル費用や運用費と、システムの導入前と導入後の作業時間・工数を比較して「どれだけ業務工数が減ったのか」の点で費用対効果を計ることとします。

ツールにかかる費用は幾つかの項目を合算した合計額になります。具体的にどのような項目の費用を対象にするのかは、後ほどご説明します。

業務の効率化については「一人当たりの負荷がどれくらい軽減するか」「残業時間がどの程度削減できるか」になります。いずれも実際に導入してみなければ見当がつかないといった場合は、工数を金額(削減目標や、不明であれば、暫定的な目標額でも可)に換算して費用対効果を算出するとよいでしょう。

費用対効果を判断するポイント

費用対効果の算出ができれば、「投資した総額が、どの程度の期間で回収できるのか」を知ることができます。初期投資の費用が大きくなる分、短期的にはマイナスになるケースが大半ですが、3年や5年で見ると十分にプラスの効果を生み出すことが可能です。

回収までの期間があまりに長いと投資価値が見出しにくくなります。しっかりと費用対効果を算出し、期待する期間で回収ができるか吟味が必要です。

費用の算出で注目するポイント

費用の部分を分かりやすくするために、必要となる費用を次のように整理します。システムの導入から維持・保守等様々な費用があげられますが、ここでは大きく、「イニシャルコスト」「ランニングコスト」に分けてそれぞれの内訳を解説します。

イニシャルコスト

ツールを導入する際に一時的に発生するコストです。

導入費用、初期費用と呼ばれることもあります。初期の支払いとして次にあげるランニングコストと比較すると高額になります。イニシャルコストの内訳は以下が挙げられます。

  • パッケージソフトウェア購入
  • OS購入(例:WindowsやLinux等のサーバーOS)
  • ミドルウェア購入(例:データベースサーバーやwebサーバー等)
  • インフラ構築
  • 構築ベンダーへの支払い

パッケージ製品購入や、その他OSやミドルウェア等のソフトウェアの費用、インフラ構築のためにネットワーク機器やサーバーの購入費用、SIerやベンダーに様々な作業を依頼する費用もこれに含まれます。パッケージソフトウェア、OS、ミドルウェア等、広義のソフトウェアにかかる費用は、何れも買い切りや、購入後のサポート期間等、様々な形態があります。

ここでは、購入初回のみにかかる費用はイニシャルコスト、購入後定期的(有期の場合も)に発生する費用はランニングコストとしています。

ランニングコスト

ソフトウェアを継続的に利用するうえで、定期的に発生するコストになります。毎月又は毎年継続的に支払う費用なので、支払いの許容範囲を踏まえ、事前に金額を知っておくことが必要です。ランニングコストの内訳は以下が挙げられます。

  • ソフトウェアライセンス
  • 保守費用
  • サポート契約コスト
  • 社内のコスト
  • アウトソーシングコスト
  • バグ修正コスト

主にソフトウェアのライセンス費用や、スクラッチ開発の場合だと保守費がこれに該当します。また、ソフトウェアをオンプレミスで利用する場合などは、オンプレミス環境にかかる費用もここに含まれます。

また、ソフトウェア運用のための人員が含まれます。社内、アウトソースを問わず直接人が関与する工数になるので、人数に比例してコストが増えます。

パッケージソフトとスクラッチソフトの費用対効果比較

パッケージソフトウェアとスクラッチソフトウェアで発生する費用のちがいは、どの様なところか。それぞれソフトウェアの機能面と運用・保守面を比較して、性質の違いから考えられる点について説明していきます。

機能面の特性

最初に機能面で費用対効果にどの様な要素が影響を与えるのかについて、「機能性、機能の拡張性、バグ対応」について比較してみましょう。

スクラッチソフトウェア パッケージソフトウェア
機能性 開発規模・期間に比例して費用が発生。パッケージソフトに比べて初期費用が高め。 機能と価格が決まっている。
スクラッチソフトに比べて初期費用が低め。
機能拡張性 拡張性能は高い。
開発費用に応じた拡張が可能。
拡張性は低い。
提供されている以上の機能を増やすことはできない。
バグ対応 保守契約範囲内で対応又は、別途見積で対応。 ベンダー側の対応で費用負担は無い。

スクラッチ開発で数千万の開発費用がかかることを考えると、パッケージソフトは必要な機能を購入後すぐに利用できるため、費用やリリースまでのリードタイムもコストに含めると、パッケージソフトウェアの方が費用対効果は高いと言えるでしょう。

バグ対応はパッケージソフトウェアの方にメリットあるかと思います。パッケージソフトでバグがあった場合、費用追加をする必要はなく、ベンダー側で対応されます。スクラッチの場合は保守費用に含まれるケースもありますが、保守契約の範囲から大きく外れる場合は、別途費用が発生することがあります。

運用・保守面の特性

次にソフトウェアの運用・保守面について、各項目の違いを考えてみます。
スクラッチソフトウェアパッケージソフトウェア

運用人数 専任が望ましい 兼任でも可能
ライセンスコスト 不要。ただし、別途保守契約が発生するケースあり 年次・月次のライセンス費用あり
サポート契約コスト ライセンス費用と別契約の場合がある
動作環境 データセンターやクラウドの契約が必要 データセンター等稼働環境の契約が必要
既存の環境で利用できる場合もあるSaaSで提供される場合もあり

運用・保守で影響が大きい部分は「運用に関わる人がどれだけ必要か」という点です。スクラッチソフトウェアは利用する対象が限定的かつ独自に開発するソフトウェアのため、運用・保守の専任者が必要になります。一方で、パッケージソフトウェアはベンダーが、決まっている機能の開発・販売を行っているため、ソフトウェアの利用についてベンダーのサポートサービスを活用すれば社内要員を減らすことができます。

また、パッケージソフトのソフトウェアライセンス費用に該当する費用として、スクラッチソフトでは保守費用といった形で費用が発生します。

ソフトウェアの運用費による比較

上記で説明したソフトウェアの性質を踏まえながら、具体的な数字を提示して費用対効果の想定を計算してみましょう。今回はスクラッチソフトウェアもパッケージソフトウェアも同じ機能を有し、年間で500万円の業務改善効果を生み出してくれたとします。また、ソフトウェアを運用するための年間コストは、スクラッチソフトウェアが840万(70万円/月)、パッケージソフトウェアが420万(35万円/月)と仮定します。

構築コストを仮にスクラッチソフトウェアを2,000万円、パッケージソフトウェアを400万円とした場合、5年間の費用対効果は以下のとおり計算できます。

スクラッチソフトウェア(イニシャルコスト2,000万円、ランニングコスト840万(70万円/月))

年次 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
総費用累計 2,840万 3,680万 4,520万 5,360万 6,200万
改善効果 500万 1,000万 1,500万 2,000万 2,500万
費用対効果 17.6% 27.2% 33.2% 37.3% 40.3%

パッケージソフトウェア(イニシャルコスト400万円、ランニングコスト420万(35万円/月))

年次 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
総費用累計 820万 1,240万 1,660万 2,080万 2,500万
改善効果 500万 1,000万 1,500万 2,000万 2,500万
費用対効果 61.0% 80.6% 90.4% 96.3% 100.0%

開発とそれに伴う運用コストの差をイニシャルコストで1,600万、ランニングコストで420万として比較すると、スクラッチでは投資額の累計に対して費用対効果は5年目でも累計費用が改修されない状況に似なります。

あくまでも想像にはなりますが、この計算では同様の業務に対する投資について費用対効果をプラスにするためには、スクラッチでは2倍以上の効果を出すか、開発する機能を限定的にすることで、開発費用とランニングコストを下げない限りは、5年以内の回収はできないと言う結果になります。

この計算では、5年目までのコストを一定にして計算していましたが、途中で追加の機能開発が加わると、さらにコスト回収までの期間が先に延びていくことになります。

まとめ

インシデント管理ツールを導入しインシデント管理などの業務が簡略化されれば、働き方改革に繋がります。情報の属人化が減り、会社全体で業務の品質向上を図れるようになります。

導入には最低でも数百万円単位の費用が発生しますので、短期的にみると「インシデント管理ツールの導入は損」と捉えられがちです。しかし、中長期的に費用対効果を評価してみると、導入する価値は十分にあると分かるはずです。短期的な数値ではなく、中長期的な数値で評価して、インシデント管理ツールに価値があるのかどうか判断してみてください。

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