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今回の記事のポイント
・エクセルから脱却できない理由
・エクセルから脱却するためのステップ

前回まではエクセルでインシデント管理を行った場合の注意点を記載しました。今回はそのエクセルから「脱却をしたいけれど出来ない理由」と題し、脱却できない原因や、脱却するためのポイントを記載していきたいと思います。

~エクセル脱却したいけれど出来ない大きな要因~

1.時間の観点

・エクセルの替わりになるものを探したいが、多忙により探す時間がない
・代替案が見つかってもそれを導入するまでの時間軸が見えない

企業のITを一手に引き受けているIT部門は日々の業務に謀殺されて、業務改革をしようとしても着手できない状況に見舞われています。改善した方が良いと頭では理解しているけれど、そこに割く工数が無いため、行動が出来ないといった状態が多く見受けられます。

また、実際にエクセルからの脱却として行動を起こそうと試みたとしても、それを実現するまでのプロセスや工程がどの程度掛かるかが具体的に明示されていないと、現状維持から一歩踏み出せずに足踏みしてしまう傾向にあります。

何かを始める時には最初からいろいろな機能を必要とするのではなく、先ずはスモールスタートでも良いので、エクセル以外でもインシデント管理が出来るようなツールやアプリケーションを初めて見る事が重要です。

2.コストの観点

・新たにツール導入するには費用が掛かる
・高額なツールを導入しても費用対効果が見えずらい

エクセルでインシデント管理を行っている場合、Microsoft Officeがインストールされていればエクセルを使用できるので、新たにツール導入をするようなコストが掛かりません。

しかしこれは「ツール導入に関しての費用」というイニシャルコストが掛からないだけで、運用フェーズに移行した後に掛かるランニングコストはもちろん掛かります。エクセルでのインシデント管理を導入して日数が経過すればするほど、エクセルに記載する内容は大きくなり、入力の手間も多くなってくるため、登録されたデータの量や管理用に追加したカラムの数に比例してランニングコストも上がっていきます。一方ツール導入は初期費用が掛かるものの、慣れてしまえばエクセル管理に比べてランニングコストを抑える事ができ、その効果が期待できるはずです。

見えずらいランニングコストですが、実際に数値化すると一目瞭然です。

――――――――――――――――――――――――――――――――
<凡例>インシデント1件の平均入力時間×1日の平均記載件数
エクセルのインシデント管理:10分×30件=300分(5時間)
ツール導入による期待値:5分×30件=150分(2時間30分)
――――――――――――――――――――――――――――――――

上記の例だと1週間でおよそ13時間弱の削減となり、IT部門の人数が2人、3人と増える事でさらに効果が期待できます。

このように目先のイニシャルコストに囚われず、将来的なランニングコストも視野に入れて計算すると、エクセルから脱却して新たにツール導入をするほうが、コスト面で大幅なメリットとなる企業も少なくないはずです。

3.組織の改革(変化)に対する抵抗

大きな妨げとなるのが改革への抵抗です。
組織での改革や、物事が変化する事に対して抵抗を持つ方は主に次に述べる理由で変化を否定します。

  • 既に何ら問題なく出来ていることを変えたくない
  • 新たに覚える事が多くて面倒くさい
  • 今まで使えていたもの(覚えた事)が無駄になってしまう
  • 「変化」することで過去にトラブルが発生した
  • 「変化」がもたらす効果が具体的に見えない
  • 「変化」の中で、自分はどうなるのか、何をすればいいのか分からない

このように様々な変化に対する抵抗がある中で、大きな妨げになっているのは、「変化により生まれるメリット < 変化が原因で発生するリスク」となっている事が大きいと考えます。リスクを恐れて変化に対する腰が重くなってしまっているのは企業だけでなく、個人でも多いと感じる方もいるのではないでしょうか。

組織がこの変化に対する考えを改めるためにはどうすれば良いのでしょうか。

■ 変化を助長して実現するためには

<STEP 1>「変化をする理由」についての情報を提供する

今回の場合はエクセルからの脱却なので、エクセルでのインシデント管理についての変化を伝える事になります。前回記載したようなエクセルが引き起こす注意点やリスクだけでなく、将来的にエクセル管理台帳のボリュームが大きくなることを考えれば、インシデント入力に掛かる工数といった「コスト削減」も視野に入れて提案できるのではないかと思います。

~提案はどのように伝えるか~
ワークショップやイントラネット・メールでの質問受付など、不安や疑問に思っていることについて、情報提供をする機会を設けることが有効です。

<STEP 2>変化に対しての考えに耳を傾ける

「エクセルから脱却する」という変化に対する感情を受け止め、不満や不安に対してヒアリングを行います。この時「トップダウンでの決定事項」「会社の決定事項」といった理由で説得せず、エクセルから脱却することにより起こるメリットを各人が状況分析できるような「事実」を交えながらわかりやすく伝えます。変化によってい生じるデメリットがあれば可能な限り伏せずに伝えましょう。

変化に対する抵抗は、理屈では説明できないものですので、上司や推進担当者との面談やコーチング導入を行い、不安や抵抗を取り除いておきましょう。

<STEP 3>「変化を受容する事」のサポートをする

エクセル管理から変わることでどのように成功するか、成功や推進についてスマートなゴールを設定し、上司や推進担当者が日々の業務でのコーチングを通じて、「変化」する事の良い側面に着目してもらうようにしましょう。

変化した組織や仕事で必要になるスキル獲得のための研修を実施するなど、適合できるかどうかに対する不安を取り除く努力を行いましょう。

<STEP 4>「変化がもたらした結果」を評価する

インシデント管理をエクセルから変化させた後は必ず評価を行います。

評価のポイントは企業によって様々ですが、よくありがちなのが、目的を見失ってしまうことです。

例えば当初の目的が「工数削減」だったとします。あくまで「エクセルから脱却すること」ではないことに注意をしてください。

【目的】工数削減

手段1:インシデント管理を効率的に行う
手段2:エクセル管理から脱却の手法を探す
手段3:インシデント管理ツールを導入する

【目的】の実現に向けた「手段」を実現して満足しないように、本来の目的「工数削減」が実現できているかを定期的に評価するようにしましょう。

変化に対する抵抗は必ずどこでも起きます。しかし改革が成功することで、組織全体のモチベーションが上がり、変化に対して前向きな組織風土が醸成されると思われます。

~まとめ~

今回はエクセルからの脱却と題して記載しました。

【時間】【コスト】【変化への抵抗】と記載しましたが、「事が起きてから反応する」リアクティブな行動ではなく、「未来を想定して働く」プロアクティブな行動で、企業のITをコントロールしていただきたいと思います。次回は最終回ですが、「エクセルからの脱却」に際し、非常にスタートしやすいツールをご紹介します。

≫最終回 インシデント管理をエクセルからITSMツールへ変えてみる
≪第3回 エクセルを利用してインシデント管理を行うと…(リスク紹介など)

◆筆者紹介

株式会社DXコンサルティング
宮崎 礼(みやざき れい)

株式会社DXコンサルティング(旧 株式会社フェスITSM事業部)に所属し、2019年11月よりManageEngineのITSM分野のアンバサダーとして従事。
大規模病院のITサービスデスクにおいて運用サポートを経験。10年間で1万5000件を超える案件に対応。電子カルテの問い合わせ窓口や操作研修の実演、端末・プリンタの設置対応をはじめ、カルテのテンプレートを500件以上作成。電子カルテの頻用項目の簡略化による医師の入力負担軽減に加え、後利用・研究に活かせると言った所謂”医療ビッグデータへの活用”に繋がる部分で、多数支援を行った。
院内会議の調整や関係各所との折衝を含め、医師や看護師といった方々と積極的にコミュニケーションを取ることで、院内の負担軽減に繋がるような提案を繰り返し行ってきた。

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