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当連載記事について
当連載記事では、ITIL®の研修を多く手掛ける専門家が、分かり易い口語体でより実際的な観点からITIL®を解説しています。サラッと読みながらもITIL®に基づいた考え方をより実践的なレベルへ落とし込むことができます。また、ITIL®に準拠するための機能を備えたITサービスマネジメントツール「ManageEngine ServiceDesk Plus」を提供するゾーホージャパンより、欄外コラムとしてツールの詳細や関連機能の説明を行います。ITIL®の概念を把握しつつ、ツールを活用した場合のイメージを広げる際の一助となりましたら幸いです。※ITIL® is a Registered Trade Mark of AXELOS Limited. |
はじめに
第一回ではITIL®の歴史をお話しました。そしてITの可視化とITサービスマネジメントについて今回からお話していくことになっていたと思います。ただ、本題に入る前に、ITIL®の中に出てくる「サービス・ライフサイクル」「プロセス」「機能」「利害関係者」という言葉を説明する必要があります。その「サービス・ライフサイクル」について本日はお話したいと思います。
サービス・ライフサイクルとは
サービス・ライフサイクルとは何でしょうか。まず、ITIL®でサービスというとITサービスのことを指します。例えば皆さんが普段使っているメールがあると思いますが、あれはITIL®的に言うとメールサービスということになります。ITIL®はITをシステムとかではなくサービスととらえています。が、サービスについて詳しくは第四回でお話しますので、今はとにかくサービスと言ったらITサービスを指していると思ってください。
で、サービス・ライフサイクルのもう一つの単語である「ライフサイクル」について説明します。ライフサイクルは、元々は「人生を円環に表したもの」です。人は生まれて命を授かり、亡くなると同時に命を失います。その生~死の間を8個のフェーズに分けたものが「ライフサイクル」らしいです。どう分けているかというと、1つ目のフェーズが「幼児期」、次が「幼少期」、最後が「老年期」という感じで進み、それぞれのフェーズは人生の出来事、例えば「結婚した」「子供が生まれた」といわれるライフイベントによって分けられます。そして、各フェーズは前フェーズで経験したものを踏襲して次のフェーズに進みます。それがライフサイクルというものらしいです。
ITIL®では、そのライフサイクルという考え方をITサービスにも取り入れました。なぜかといえば、ITサービスも生まれてから亡くなる(廃止される)からです。
その結果、ITIL®では「ITサービスのライフサイクルには5つのフェーズがある」と言い出しました。そのフェーズが、
・サービスストラテジ(SS:戦略)
・サービスデザイン(SD:設計)
・サービストランジション(ST:移行)
・サービスオペレーション(SO:運用)
・コンティニュアルサービスインプルーブメント(CSI:継続的サービス改善)
という5つで、これがサービス・ライフサイクルというものです。ちなみに前回の記事でITIL® V3と2011Editionは5冊の本だといいましたが、5冊の理由はこのライフサイクルの5つのフェーズ毎に本をまとめたからです。
では、それぞれのフェーズがどういう関係なのかを見ていきましょう。
まず、ITIL®では事業(ビジネス)とITを分けて考えています。図で言うと青い線より右側がIT、左側が事業です。そしてITIL®の発想では、まず事業側から要件や要望、事業目標等を受け取ることでITの活動がスタートするとされています。というのも、銀行業を例に話すと、そもそも日本の銀行は明治時代からあります。明治時代にITがあったかというと、なかった。ITがない中で事業側はどうやって仕事をしていたかというと、帳簿に預金された金額や預金者の名前を記載していたんでしょう。計算はそろばんでしょう。というように、そもそも事業というものはITがなくても成り立つのです(最近ではIT前提の事業もあるので一概に言えなくなっていますが)。
ただ、いくらITがなくても事業が成り立つとはいえ、さすがに預金者が何万人にもなってくれば管理することが難しくなる。そうこうしていると世の中ではコンピューターといわれるものが発明されて、あれよあれよという間にデータベースを使って預金者の情報や預金額を電子的に一括で管理できるようになってきた。そうすると事業側は当然、手書きの帳簿とかで管理していると辛いので、電子化、つまり「IT化してよ」という要望が上がってくる。それが顧客とSSをつないでいる矢印になるんですね(上図参照)。つまり、事業がITに対して「IT化してください」という要件をあげたということです。そして、これがITにとってのスタートとなります。
で、要件を受け取ったITはどうするか。当然、事業側が困っているんだから助けてあげたいんです。だから前向きにIT化を進めていくんでしょう。とはいえ、いくら事業側がIT化を望んでいるといっても、IT化するのに1兆円かかるとなったらおそらくほぼ間違いなくIT化をしないでしょう。なので、IT側は事業から要件を受けとったらIT化すべきかどうかを検討することになります。それが戦略。つまりサービスストラテジです。
そして、サービスストラテジでいろいろ考えた挙句、やっぱり「IT化をすすめましょう」(ITIL®的に言うと「ITサービスとしてサービスを立ち上げましょう」)となると、サービスデザインに引き継ぐことになります。サービスデザインは、日本語では設計というフェーズです。なので、立ち上げることになったITサービスの設計を行うフェーズです。で、設計を進めていくわけですが、設計をするということはいわゆる設計書といわれる文書をつくりあげていくことになります。そして、設計書以外にも設定書とか計画書なども作成するんですね。それらをすべて取りまとめて一つの文書にして次のフェーズであるサービストランジションに引き継ぐことになります。
ただ、ちょっとここで疑問が発生します。サービスデザインで設計するのはよいのですが、設計しても出来上がるのは設計書などの文書なのです。「誰が形作る活動(つまり開発)をするの?」という疑問が生まれます。実は、ITIL®では開発という活動(開発プロセス)は、定義されていません。理由が明確にITIL®の書籍に書かれているわけではないので、私見になりますが、おそらく開発プロセスは「プロジェクト化」されることがほとんどでしょう。そしてプロジェクトを管理する手法は、すでにPRINCE2®、PMBOK®といわれる知識体系が世の中に存在しています。それらを使って開発をプロジェクトとして管理すればよいと割り切っているのだと思います。
それにITIL®の目的の一つは品質の向上です。実際にどう作るか。という話よりも、テストなどを通してでき具合を見る方が重要です。なので、テストの管理はITIL®では行いますので、そのあたりで線引きをしているのだと思います。ともかく、ITIL®では設計については整理している一方、開発プロセスがないため、実際にプログラミングするなどはITIL®外の活動で行ってもらいます。そしてここまでくると、いよいよ本番環境でサービスを提供していくことになります。
そこで次のフェーズになるのがサービストランジションです。サービストランジションは日本語で「移行」です。トランジションの動詞はトランジット(Transit)。海外旅行などで直行便でない飛行機を使うときにトランジットするとか言いますよね。そのトランジットで、名詞はTransition。移り変わるという意味を持っているようです。ITIL®ではその単語を「移行」と翻訳してます。
で、そのサービストランジションでは何をするかというと、検証環境にあるITサービスを本番環境に移すことをします。ITで本番移行というと、経験がある人はわかると思いますが、単純にコピーするだけという話にならない。むやみやたらにコピーすると失敗することがよくある。関係ないサービスを止めてしまったり、他のサービスに影響がなくても移行した新しい機能が使えなかったり・・・。あるいはデータがうまく移行できないとか。そういうことがあると困るので、移行という活動自体を管理しようというのがサービストランジションというフェーズなんですね。
で、そのサービストランジションで移行が完了すると、いよいよサービスイン。つまりサービスの運用が始まるわけです。サービスオペレーションというフェーズが始まるということですね。これが4つのフェーズの関係です。
残りはCSIというフェーズ。これは日本語で言うと「継続的サービス改善」というフェーズです。名前の通り継続的に改善をしていくフェーズなのですが、改善はいつ行うのでしょうか。最後に話しているから4つのフェーズの後かというと、そんなことはありません。4つのフェーズで活動している最中にも改善しなければならないことは出てくるでしょう。なので改善は、「いつ行う」という話ではなく、「発生したら都度行わなければならない」という話になります。よって、他の4つのフェーズの後にあるわけでなく、どの段階からでも呼び出されるということになっています。これが5つのフェーズの関係になり、サービス・ライフサイクルの概要になります。
最後に
次回はプロセスと機能、利害関係者について説明します。
>>記事一覧:ITの品質向上とコスト削減からとらえたITIL®
執筆者情報
日本クイント株式会社 コンサルタント 吉村友秀(よしむら ともひで)主要資格:ITIL® エキスパート、公認情報システム監査人(CISA) |

ITIL®準拠のためのITSM機能を網羅したツール
連載コラムをご一読頂き、ありがとうございます。ManageEngineでは、ITIL®準拠のためのITSM機能を網羅した「ServiceDesk Plus」というツールを提供しています。
メーカーの立場では、なかなか専門的なITSMについてのお話をご提供できませんが、そちらは日本クイントさんの連載記事をぜひご一読いただけますと幸いです。今回、当コラムではServiceDesk Plusの特長およびITIL®準拠関連の機能一覧をご紹介致します。
<ServiceDesk Plusの特長>
ServiceDesk Plusは、2014年に「PinkVERIFY」認証を取得しています。この認証は、ITIL®のコンサルティングや教育、カンファレンスの世界的なリーダーであるPink Elephant社が提供する認証プログラムで、ServiceDesk PlusがITIL®に適合するツールであることの証明となっています。
昨今の例外に漏れず、ITSMの現場でも「新しく導入するツールはクラウドにするかどうか」がトピックとして上がることも多いのではないでしょうか。ServiceDesk Plusは、オンプレミス版/クラウド版の両方で利用が可能なツールです。ITIL®に適合することに加え、IT部門の方針に合わせた形態で利用できる点も、ツールとしての特長となっています。
なお、ServiceDesk Plusはオンプレミス版/クラウド版の双方に評価版(30日間無料&サポート付)がございます。ツールをインストールするサーバー環境がない場合は、ユーザー登録だけで開始できるクラウド版を使って、ぜひお試しください。
<どんな機能があるの?>
ServiceDesk Plusのメイン機能は、インシデント管理/問題管理/変更管理/サービス要求管理/CMDB/IT資産管理/ナレッジ管理となっています。
機能一覧ページも、ぜひご参照ください。
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