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当連載記事について

当連載記事では、ITIL®の研修を多く手掛ける専門家が、分かり易い口語体でより実際的な観点からITIL®を解説しています。サラッと読みながらもITIL®に基づいた考え方をより実践的なレベルへ落とし込むことができます。また、ITIL®に準拠するための機能を備えたITサービスマネジメントツール「ManageEngine ServiceDesk Plus」を提供するゾーホージャパンより、欄外コラムとしてツールの詳細や関連機能の説明を行います。ITIL®の概念を把握しつつ、ツールを活用した場合のイメージを広げる際の一助となりましたら幸いです。
※ITIL® is a Registered Trade Mark of AXELOS Limited.

 

はじめに

ITを取り巻く環境に関して言えば、たとえ景気が上向きになったとしても、大規模な設備投資を際限なく行えるわけではありません。むしろ、ユーザのITリテラシー向上や、モバイル端末、クラウドの普及により、従来のシステムやサービスをより効率的かつ低コストで利用することを追求する流れが加速しています。

結局のところ、新しい技術が発明され、普及しても、ITは常に品質の維持(できれば向上)が期待され、コストの削減が求められるという流れに逆らうことはできないのでしょう。

そして、ITにそれら品質の向上とコストの削減を求めてくるのは、ITを利用する組織の経営層や、スポンサーといわれる顧客、事業部門であり、求めに応じるのは、IT部門でありつづけ、しわ寄せは、IT部門の課長やリーダーをはじめとした現場でありつづけるという構図は、しばらくは変わらないでしょう。

今回、私が記事を連載することにした理由は、上記のような品質の向上とコストの削減を求められ続ける環境下で働かれている情報システム部門(IT組織)の方々に、一つの解をご紹介できればと思ったためです。全部で13章を想定しています。お役に立てるかはわかりませんが、お時間があればお付き合いください。

品質の向上とコストの削減を目指すにはどうすればよいのか?

結論をいえば、ITサービスマネジメント(ITSM)を行いましょう。ということになります。

というのも、そもそもITSMはITサービスを可視化しながら、ITサービスをコントロールしやすくし、品質の向上やコストの削減を図ることを目的にしているからです。では、ITSMは品質の向上とコストの削減をどのように達成しようとしているのでしょうか?

ITサービスマネジメントとその代表

まず、ITSMとは何なのでしょうか?

前述しましたが、ITSMは、品質の向上やコストの削減を目的にITサービスを可視化して管理/提供しつづけていくことです。そのため、日々IT部門の皆様が行っている取り組みは、広くとらえればITSMの一部ということになります。よって、世の中には様々なITSMが存在することになります。が、その中でも有名なITSMにITIL®というものがあります。今回はこのITIL®をベースにITSMを説明していきたいと思います。

ITIL®の歴史

ITIL®はなぜ生まれたのか?

ITIL®は元々、1980年代にイギリス政府が体系的にまとめたITSMであり、その書籍を指す言葉です。

なぜ、イギリス政府がITSMを書籍にまとめることにしたのかというと、1980年代にイギリス政府で使っていたITシステムがひどい状況だったからのようです。いわゆる”使えない”ITだったということでしょう。お金をかけて改修したけどITは止まっちゃう。新しい機能を実装してもバグだらけ・・・という状況だったのでしょうか。お金を出している政府としては、黙っていられないわけです。税金の無駄遣いということにもなるでしょうから。

そこで、イギリス政府は、「コストの削減」を目的にITを使いこなせる術を手に入れようと考え始めました。そして、当然、バグだらけということですから、コストと合わせて品質も改善されなければなりません。よって「品質の向上」も含めてITを使いこなせる術を手に入れようということになりました。その結果、イギリス政府は、コストと品質の両面で上手にITを使いこなせている事例を各企業から提出してもらうことにしました。この「上手にITを使いこなせている事例」というものが「成功事例(ベストプラクティス)」といわれるものになります。

そしてこのベストプラクティスを集めたイギリス政府は、自分たちのITにも当てはめられるように体系化しました。それがITIL®のバージョン1といわれるものです。このバージョン1は、当初40冊以上の書籍にまとめられたらしく、英語版のみが存在します。

その後、1990年代になるとWindowsなどのGUIを使ったOSがリリースされ、PCの価格低下やダウンサイジングが進み、クライアントサーバ型といわれるアーキテクチャやRAIDといわれる冗長化構成も普及し、ブロードバンド化が進み、インターネットも身近になり、一挙に技術革新が進みます。このように、今までITを取り巻いていた環境が変わっていきました。

この環境の変化に伴って、ITの提供モデルやビジネスモデルが変わっていきます。たとえば、ブロードバンド化が進んだことにより、遠隔地にバックアップサイトを設けやすくなりました。するとITを生業としている組織(IT企業)は、災害対策としてバックアップサイトを提案しやすくなりますね。

違う例では、Windowsが普及することによりクライアントサーバ型が普及し、今までメインフレームとダム端末のセット販売で売り上げを出していたビジネスモデルが、サーバのみ、クライアントのみの販売でも売り上げを確保できるモデルになりました。このように1990年代の技術革新はIT企業にとっては比較的大きな変革でした。

当然、この技術革新やIT環境の変化はITSMの世界にも影響を与えます。1980年代にまとめられたITIL® バージョン1は、前述の技術革新の前にまとめられている知識体系です。ということは、クライアントサーバ型やインターネットのブロードバンド化は前提としていません。前提としているのはメインフレームとダム端末という組み合わせのビジネスモデルでしょう。多少の技術革新であれば、従来からの知識体系で補うことはできたかもしれませんが、補える範囲を超えてしまった。そこでITIL®は新たにバージョン2(V2)としてITSMの知識体系をまとめなおすことにしました。

まとめなおされて世の中に発表されたのが2001年。今世紀の初めての年。未来を感じさせてくれるバージョンアップなのか・・・というと、そういうわけには行きませんでした。

所詮ITSMです。あくまでも品質のよいITを提供することがメインです。なので「宇宙ビジネスの登場」などと比較すれば地味な変更になります。が、V2をまとめるにあたり、相当ブラッシュアップし、ダイエットしたのでしょう。40数冊あったものが7種類8冊の本にまとめなおされました。しかも、ITIL®はイギリス政府が使うことを前提に作成されたため、もともと英語版しかなかったのですが、V2の登場と共に複数の言語に翻訳されました。日本語化もされました。グローバル対応です。この点は、新たな世紀にふさわしいですね(笑。

このバージョンアップと翻訳の結果、ITIL®は世界的に広がっていきました。日本語訳が分かり辛いなどの意見はありましたが(今もありますが)、そうは言っても、今までスタンダードとなる知識体系がなかった分野です。しかも資格体系も整備されていました。ITの現場は日々の業務で悲鳴を上げていたので、皆さんITIL® V2に飛びつきました。非常に流行しました。17年以上過ぎているにも関わらず、いまだにV2の時の資格をもっている方や、その知識をベースにITを管理している組織があるくらいです。そのくらい流行りました。

ところが、V2はタイミングが悪かった。メインフレームからクライアントサーバ型に移行している環境下でのリリースだったのですが、V2ではITのマルチサプライヤ化(複数の委託先を使ってITを支援する)の考え方が含まれていなかった。また、ITの戦略があることには気づいていたのですが、戦略にも立案や見直しがある点、IT戦略を事業戦略と合わせる必要がある点など、いくらか改定が必要でした。そこで、新しいバージョン(V3)が発表されました。発表されたのが2007年です。

V3ではマルチサプライヤ対応やIT戦略に関する改定を加えたのですが、加えて「サービス・ライフサイクル」という考え方も導入しました。その結果、V3の書籍は5冊になりました。V2と比較したら3冊減ったことになります。V1の頃は40数冊だったので、相当ダイエットしました。ところがダイエットしすぎてダイエット疲れしてしまったのか、この5冊をリリースしてみたら間違いがたくさんあった。記載内容に誤字もあれば矛盾点もあった。さすがに放置できなかったのでしょう、マイナーバージョンアップとして2011年に2011 Editionというバージョンを作成して発表しました。が、あくまでもマイナーバージョンアップです。なので名前はV4ではなく2011 editionとなりました。そして、現在はこのバージョンが最新のものとなっています。

尚、ITIL®の著作権(登録商標)は2011 editionが発表されるまではイギリス政府が所有していましたが、2014年からは所有者がAXELOSという会社に代わっています。この会社はイギリス政府が半分出資している半官半民の会社になります。そして、そのAXELOSから2019年にITIL® 4(Vはつかない)として新しいバージョンがリリースされることが発表されています。これがITIL®の歴史でした。

最後に

それではITSMの代表として取り上げているこのITIL®が、どのようにITサービスをマネジメントしていくのか?についてお話をしていきたいと思います。が、それは次回以降にお話ししていきたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

>>記事一覧:ITの品質向上とコスト削減からとらえたITIL®

執筆者情報

日本クイント株式会社 コンサルタント 吉村友秀(よしむら ともひで)
主要資格:ITIL® エキスパート、公認情報システム監査人(CISA)

 



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今後、記事の内容と連動して、少しずつツールのご紹介も行いますので、ぜひご参照ください。

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