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■当連載記事について
当連載記事では、ITIL®の研修を多く手掛ける専門家が、分かり易い口語体でより実際的な観点からITIL®を解説しています。サラッと読みながらもITIL®に基づいた考え方をより実践的なレベルへ落とし込むことができます。また、ITIL®に準拠するための機能を備えたITサービスマネジメントツール「ManageEngine ServiceDesk Plus」を提供するゾーホージャパンより、欄外コラムとしてツールの詳細や関連機能の説明を行います。ITIL®の概念を把握しつつ、ツールを活用した場合のイメージを広げる際の一助となりましたら幸いです。※ITIL® is a Registered Trade Mark of AXELOS Limited.■著者紹介 ※当番外編についてのみ、特別に以下の著者による執筆となっております。 日本クイント株式会社 代表取締役 最上 千佳子(もがみ ちかこ)システムエンジニアとしてオープン系システムの提案、設計、構築、運用、利用者教育、社内教育など幅広く経験。顧客へのソリューション提供の中でITサービスマネジメントに目覚め、2008年ITサービスマネジメントやソーシング・ガバナンスなどの教育とコンサルティングを行うオランダQuint社(Quint Wellington Redwood)の日本法人である日本クイント株式会社へ入社。ITIL®認定講師として多くの受講生・資格取得者を輩出。 2012年3月、代表取締役に就任。ITSM、リーンIT、ソーシング・ガバナンス、DevOps、アジャイル等、ITをマネジメントという観点から強化しビジネスの成功に貢献するための、人材育成と組織強化のコンサルティングに従事。 主要資格
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はじめに
2019年2月18日にITIL®の最新バージョンである「ITIL 4」の書籍の1つである「ITIL 4 Foundation」(英語書籍)がリリースされました。今回はその改版の背景と何が変わったかについて概要を紹介します。
※現時点では、ITIL 4の日本語書籍は発表されていません。従って、以下に出てくるITIL 4の用語は著者による訳であり、正式な訳ではございません。ご了承ください。
バージョンアップの背景
2011年に「ITIL® 2011 edition」がリリースされて以来、約8年が経過しました。その間に技術は急速な進化を遂げ、「まだまだ先の話だ」と思っていたような事柄がどんどん現実化してきています。
クラウド、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)やビッグデータ、AI(Artificial Intelligence、人工知能)、ロボティクスなどがその最たるものです。また、ユーザーリテラシーも向上しています。多くの人がインターネットを使いこなし、スマートフォンから各種サービスにアクセスできるようになりました。このようにITの進化が急激にビジネスを変化させる「デジタル・トランスフォーメーション」の時代において、いかに最新のITを最適に活用できるかが、成功の鍵となりました。
今回のITIL 4へのバージョンアップの目的は、このような時代背景の変化とそれに伴う新たなベストプラクティス(成功事例)の収集と共有にあります。
追加された要素
ITIL 4に追加された要素は以下の4つです。※少なくともITIL 4 Foundationで発表されている内容です。
・ガバナンス
・リーン
・アジャイル
・DevOps
これらは、デジタル・トランスフォーメーションの時代に必須の要素と言えます。
簡単に言えば、この変化の速い時代において、迅速に顧客にとっての価値を開発し(アジャイル)、開発と運用とがシームレスに連携して価値を提供し(DevOps)、価値を継続的に生み出し続けることを追求する(リーン)ことが重要であるとともに、そこに統制(ガバナンス)も効かせていくというバランスが必要となります。ITIL 4は従来のITSMにこれらの要素を追加し、最新のベストプラクティス(成功事例)集として発表されたと言えます。
新概念①「SVS」
ITIL 4全体の仕組みとして「SVS(Service Value System、サービス・バリュー・システム)」という概念が定義されました。そのSVSは以下の5つから構成されています。
・SVC(Service Value Chain、サービス・バリュー・チェーン)
・マネジメント・プラクティス
・従うべき原則
・ガバナンス
・継続的改善
これまで以上に広い概念が形成されました。以下ではこの中の最初の2つについて紹介します。
新概念②「SVC」
SVSの中心的な要素としてSVCが定義されています。SVCとは、その名の通り「価値を生み出す活動」です。前バージョンのサービスライフサイクルの各段階(サービスストラテジ、サービスデザイン、サービストランジション、サービスオペレーション、継続的サービス改善)の進化系とも言えます。特にチェーン(鎖)という表現は、互いに関係しながらつながっていることを表しており、時系列ではないことを強調しています。
SVCでは以下の6つの活動が定義されています。
・Plan(計画)
・Improve(改善)
・Engage(エンゲージ)
・Design and Transition(設計と移行)
・Obtain/Build(調達/開発)
・Deliver and support(提供とサポート)
新概念③「マネジメント・プラクティス」
「インシデント管理」「変更管理」など、従来「プロセス」と呼ばれていたものを「マネジメント・プラクティス」と呼ぶようになりました。「プラクティス」とは実践や事例という意味です。そもそもITIL®とはITSM(ITサービスマネジメント)についてのベストプラクティス(成功事例)を集めてフレームワーク化したものです。その中で特にわかり易いものとしてプロセスが注目されてきました。しかし今回、その原点に立ち戻って「プラクティス」という表現を採用したと言えます。
33個のマネジメント・プラクティスが以下の3種類に大別されています。
・General management practice(一般的なマネジメント・プラクティス)
・Service management practice(サービスマネジメント・プラクティス)
・Technical management practice(技術系のマネジメント・プラクティス)
例えば、ナレッジ管理は「一般的なマネジメント・プラクティス」、サービスレベル管理やインシデント管理は「サービスマネジメント・プラクティス」、展開管理は「技術系のマネジメント・プラクティス」に分類されています。
最後に
SVSという概念やマネジメント・プラクティスの登場により、ITIL 4は範囲が大きく広がったように見えるかもしれません。しかし、その本質に変わりはありません。「いかに顧客にとっての価値を効率的かつ効果的に提供するのか」の一言に尽きます。そのために改善し続けるマネジメントがITSMであり、世界のベストプラクティス(成功事例)集がITIL®です。自分達にとって顧客は誰だろう?その顧客にとって価値があるコトとは何だろう?それを提供するには自分達は何をすればよいだろう?・・・このような問いの答えの一つがITIL®の中にあります。
>>記事一覧:ITの品質向上とコスト削減からとらえたITIL®
ITIL®準拠のために活用できるITSMツール「ServiceDesk Plus」
連載記事をご一読頂き、ありがとうございます。今回の番外編では、第1回から第13回までの本編に加え、ITIL®の最新情報が紹介されています。ITを取り巻く環境は日々急速に変化しており、ITIL®もその例に漏れません。今後のトレンドを把握する際の一助としてお役立て頂けますと幸いです。
さて、当連載記事を掲載しているManageEngineでは、ITIL®に準拠するにあたって活用できるITSMツール「ServiceDesk Plus」を提供しています。ServiceDesk Plusは、サービス要求管理/インシデント管理/問題管理/変更管理/IT資産管理/CMDB/ナレッジ管理などの機能を備えており、ITIL®準拠を目指す企業/組織様をツール面から支援します。
製品の詳細を知りたい方は、ぜひ「訪問説明/デモ」依頼窓口や無料のWebセミナー、製品概要資料をご利用ください。
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