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CMDBの構築を複雑に考えてはダメ!の図

■ はじめに

ビジネスが拡大するにつれ浮かび上がる社内ITサービスの「品質問題」。品質の低下を引き起こす原因のひとつに資産管理があります。たとえば、従業員数の増加に伴う保有IT資産数の増加です。数が増えれば増えるほどすべてのIT資産がどこで、どのように運用されているのかを正確に把握することは容易ではなくなります。

しかし、難しいからとIT資産の管理者は管理を放棄することはできず、サーバー統合などで複雑化する資産の状況を把握し、故障・サービスの停滞・セキュリティに関する警告などが発生した場合に備え、業務にどのような影響があるのかをあらかじめ可視化しておく必要があります。組織内のITネットワークや資産の運用状況を把握しておらず、資産が他の資産とどのように関係しているかを明確にできないIT運用管理の現場には、障害発生時の影響範囲を即座に特定できない、脆弱性を含みウィルスのターゲットになる恐れのある端末が社内にどれほどあるか把握できていないなどさまざまな危険が潜んでいることは明白です。そこで、これらの危険の軽減を期待できるのが構成管理プロセスの活用です。もともとデータセンターなどで利用されることの多かった構成管理データベース(CMDB)を一般企業でも応用できればIT資産管理の複雑さの解決につながるでしょう。

では、データセンターではない企業が構成管理プロセスをIT資産管理に適用するにはどうすればよいのでしょうか?残念ながら、CMDBの実装を試みて失敗したという話は枚挙に暇がありません。本記事では、CMDBの実装を成功させるためのより簡単な方法について紹介しながら、その他のITへの活用や展開についても言及します。

 

■ CMDBのいろは

CMDBConfiguration Management Databaseの略称で、日本では構成管理データベースとも呼ばれています。 各アイテムの所有者情報や他のアイテムとの依存関係などの重要な情報とともに、必須アイテムのアップタイム、サービスの品質、ユーザーなどへの影響がCMDBに保管されます。 CMDBの機能は次の役割を果たします。

  • 組織内のすべてのIT資産とその構成を明確にする
  • 組織内の実際の構成情報に照らし合わせた構成情報を維持・管理する
  • 正しい構成情報でI Tサービスマネジメントプロセスを支援する

CMDBの目的は、ITサービス管理における正しい決断をするための正しい情報を提供することです。どんな状況でも決断するためには情報収集が必要なように、ITにおいてなんらかのアクションがなされるとき、その背景には必ず決断を促す情報が必要とされます。情報やデータなしの決断は根拠のない直感や当て推量でしかありません。直感で打った球がホームランになる確率が低いのと同様、正しい決断には、正しい裏付けデータが必要なのです。 ITにおいても効果的な決断を下すためには、正しい情報源から正しいデータを参照する必要があります。そして、その正しい情報源となるのがCMDBなのです。ここで、CMDBを構築していなかったとある会社の事例を見てみましょう。

ある日、A社ではインターネット接続の問題が発生しました。 分析の結果、監視ツールを導入するために従業員の1人がファイアーウォール内のポートを開け閉めしていたことが分かりました。 彼はファイアーウォールに2つの主要リンクが繋がっていることを知らなかった ため、ポートを閉じることで業務に与える影響を予測できませんでした。 この小さなインシデントは、結果的に、社内の半数もの人たちがインターネットに接続できなくなるという事態をもたらしました。 ポートを閉じてしまった従業員も、構成アイテムが業務に及ぼす影響を事前に 把握できていれば、より良い対応方法を選択できたでしょう。つまり、適切なCMDBが構築されていれば、インシデントの発生を回避できたのです。

 

■ CMDBの構築は難しい?

Zoho Corporation Pvt. Ltd.がManageEngineユーザーであるIT担当者を対象に実施した2012年の調査では、CMDBの導入には程遠い段階にあると回答したユーザが多数いることが判明しました(グラフ1参照)。述べ回答者数124名中87名のIT担当者は、CMDBを知らない、知っていたとしても構築の優先度は低いと回答しています。また、CMDBの構築を試みたことのあるIT担当者たちも、計画段階で中断してしまうか、失敗に終わることが多く、一般的にCMDBの構築は大きな挑戦だと思われています。失敗の原因の多くは、CMDB構築計画の脆弱さや、誤った期待値を設けることにあります。

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グラフ1 「なぜ組織にCMDBを導入しないのか?」回答結果

 

そのような中でもCMDBの構築に成功したIT担当者が実感している、正しいデータを瞬時に参照できるメリットの大きさは測り知れません。CMDBを構築する最も有効な方法は、プロセスをシンプルにし、構築作業を最小限に抑えることです。また、把握したい資産のカテゴリをどこまで細分化しCMDBに保管するかを正確に把握することが大切です。さらに、CMDBに何を求めるべきなのかを見極め、正しい期待値の設定が必要です。不要な作業は極力回避し、達成可能で、かつ、達成後も管理できる範囲の中で目標を設定します。 管理したい資産の種類を追加する場合は、より幅広い構成管理が実施できる段階になってから行うのが良いでしょう。

 

■ CMDBのシンプル化

ステップ 1:参考書のプロセスは忘れる

CMDB成功の必須条件その1は、「参考書で読んだことはすべて忘れ、一般常識で対応する」です。 成熟していないヘルプデスクチームがITILを導入するがために、なんの準備もなくいきなりCMDBの道へ足を踏み出すのは危険です。ITILを導入する際は、最初からCMDBの構築を始めるのではなく、成功事例が多く存在するインシデント管理や変更管理など基本のITサービスサポートプロセスから実装するのが賢明でしょう。その後、各管理プロセスの運用が軌道に乗ってから望ましい時期を見計らってCMDBを構築します。

CMDBを構成する要素である構成アイテム(CI)とは一体何でしょうか?

構成アイテムは組織に存在するありとあらゆるIT関連アイテムを指します。この中には、サーバー、アプリケーション、利用中のユーザー情報などもすべて構成アイテムに含まれます。 CMDBの構築に際して頻繁に聞かれるのが、椅子やデスクといった備品も構成アイテムに該当しますか?という質問です。「はじめに」で紹介したとおり、データセンタで利用されることの多かったCMDBでは、データセンタ事業に必要不可欠な資産のみが構成アイテムであると言われています。 しかし、椅子やデスクといった資産をCMDBで管理する事例もあり、備品をCMDBで管理するのは間違いであるとは言い切れません。 この話題については、ステップ2でさらに踏み込んで説明します。 余談ですが、先の調査では「CMDBで管理したい構成アイテムは何か?」という問いに対し、回答者100名のうち46名が「ITに関連するすべての情報」と答えており、IT資産のみを管理したいと考える回答者52名をわずかに下回っただけでした(グラフ2参照)。

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グラフ2「CMDBで管理したい構成アイテムは何か?」回答結果

 

ステップ2: CMDBで何を管理するかを決定する

より多くの企業がITサービスマネジメントの一環としてCMDBを導入するようになり、CMDBで管理すべき構成アイテムの境界が曖昧になっています。CMDBがデータセンタ事業で利用されてきた経緯から、ITインフラ関連資産以外を管理するのは無用だとするIT担当者もいる一方で、昨今ではCMDBの利用価値をITインフラ関連資産に限定しない方が良いとするIT担当者が増加しています。

ここでは、CMDBの内容を次のように定義してみましょう。

  • 事業の遂行に必要不可欠なIT要素
  • 要素と要素の関係
  • その関係が業務に及ぼす影響

つまり、CMDBでは、事業の遂行に必要不可欠な資産を適切に管理することが重要なので、資産が業務に重大な影響を与える場合には構成アイテムとして管理し、それほど影響を与えないと考えられる場合には、CMDBでは管理しないといった、柔軟な判断が必要であると考えられます。

ステップ 3:業務に及ぼす影響力を基に構成アイテムの関係を作成する

世の中で「関係」と名の付くものは、えてして複雑になりがちですが、構成アイテムの関係の複雑さも例外ではありません。現在自社で利用しているクライアント端末のOSのバージョンはいくつで、どのようなアプリケーションが実行されているでしょうか?クライアント端末が利用できなくなった場合に影響を受けるユーザーやほかのIT機器にはどのようなものがあるでしょうか?CMDBの主な目的のひとつはこのような構成アイテムの関係を把握することです。ネットワークを明確に認識することで、インシデント発生時にも正しく対応できます。

事例2: B社では、サーバに新しくソフトウェアをインストールすることになりました。このソフトウェアはインストール完了後に、サーバーを再起動する必要があります。 そこで、B社のIT担当者がCMDBを確認したところ、同サーバーには、重要な会計業務用アプリケーションがインストールされていることがわかりました。このアプリケーションは経理部が毎日利用しているため、業務時間中のサーバの再起動はできません。そこで、IT担当者は経理部が利用しない時間帯にソフトウェアをインストールすることにしました。 もし、B社でCMDBが構築されていなかったら、IT担当者は、サーバで実行中のアプリケーションや、アプリケーションに関連するユーザの情報を把握することは難しかったでしょう。ソフトウェアのインストールという日常的な作業が、業務に多大な影響を与える大参事にもなりうるのです。

構成アイテムの関係を把握することがいかに重要か、お分かりいただけたでしょうか。

 

■ まとめ

ManageEngine製品ユーザーを対象とした2012年の調査の結果を見ても、CMDBの認知度は十分に高いとは言えず、認知していても、現時点での導入は優先度が低いと考えています。しかし、想像しているよりもシンプルな方法でCMDBを構築し、機能を最大限活用できれば、ITサービスの効率化をさらに促進できるのは間違いありません。

CMDBを構築するには、3つの簡単なルールに則って取り組むことが重要です。ひとつ、複雑な理論や方法は忘れること、2つ、IT資産/非IT資産を問わず、業務に必須となる資産だけを抽出し構成アイテムを正確に定義すること、3つ、構成アイテム間の関係を可視化することです。

CMDBは、ITサービスサポートのすべてのプロセスに関連するITILの中核とも言えるものです。CMDBの構築に成功すれば、正しいデータを瞬時に参照できるメリットを実感できるでしょう。

 

■ ManageEngine ServiceDesk Plusとは

ManageEngine ServiceDesk Plus(以下、ServiceDesk Plus) は、Webベースで直観的な操作が可能なサービスデスク構築・運用ツールです。インシデント管理と資産管理ができるだけでなく、問題管理、変更管理、サービスカタログ、CMDBなどを備え、ITIL準拠のサービスデスク構築を支援します。

■ ServiceDesk PlusのCMDB機能はここが違う

ServiceDesk Plus のCMDBで組織が所有する資産を明確に把握できるようになります。CMDBで構成アイテムの特性や依存関係などの情報を維持管理することで、効率的かつ正確なITサービスマネジメントを実現します。

 

このホワイトペーパーはZoho Corporation Pvt. Ltd. が2013年に発行した“CMDB Implementation – A Tale of Two Extremes”を翻訳・修正したものです。